肥満症の改善を目指して

先生方からの応援メッセージ

お腹がすいたということは、今、脂肪が燃えている、痩せているということ。

早川 麻理子 先生

名古屋経済大学 人間生活科学部 准教授

「食事は何があろうと楽しくないといけない、おいしくないといけない」とおっしゃる早川先生は、肥満症患者さんの栄養指導に当たられています。
今回は、そんな早川先生に、食事療法との向き合い方について伺いました。

肥満症とのかかわり

私は、以前、心臓血管外科で、心臓の手術を受ける人たちの栄養管理を担当していました。患者さんの多くは糖尿病や肥満があり、結果的にそれが心臓手術に至る原因となっていました。

そこで、手術が必要となるもっと前の段階で、お手伝いをしたいと思ったのが肥満症の栄養管理にかかわるきっかけです。
今は、主に肥満症の方を対象に、栄養指導を行っています。

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栄養指導のスタンス

食事療法の成功には患者さんの決意が欠かせません。私たち管理栄養士は、情報提供という形でサポートします。毎日の生活の中で最も重要であろう「食事」という領域に足を踏み入れる以上、できるだけ負担の少ない方法で、しかもおいしいやり方を提案するように心がけています。私がかかわることで、その方が不幸になることのないように、我慢ではなく楽しんで取り組めるように、と考えています。

栄養指導の流れ

私の栄養指導は本人の希望を聞くことから始まります。
そして、最終的に何kgの体重になりたいのか具体的な数値目標を設定していきます。
体重を減らすに当っては、まず、「食事」、「間食」、「飲み物」のどれが一番簡単で減量に効果が高いかを考えます。

私の栄養指導は本人の希望を聞くことから始まります

私たちはみな、すべてを完璧にできるわけではありません。
一番大切なポイントを見つけ出してそこに集中して取り組んでいくことが大切です。
患者さんには、「お腹がすいたということは、今、脂肪が燃えている、痩せているということなんですよ」とお話ししています。

体重を減らすための「食事」、「間食」、「飲み物」

「食事」で減らす場合

ご飯などの炭水化物と、油などの脂質を減らすことがポイントです。体を作る材料になるたんぱく質を減らし過ぎることは避けましょう。

特に夕食後に使われるエネルギーは少ないため、夕食のコントロールは大切です。ご飯は1杯でおよそ250kcalありますから、夕食で2杯食べていたご飯を1杯にするだけでも、計算上では月に1kgの減量効果が見込めます

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炭水化物と、油などの脂質を減らすことがポイントです

「間食」で減らす場合

実はこれが一番やっかいです。甘いものには中毒性があるのです。例えば、1回に食べる量はキャラメル1個だけど、1日で1袋全部食べてしまうという方もいます。

30分や1時間ごとに糖を摂っていると血糖値が上がりっぱなしの状態となり、体脂肪が燃えるチャンスがなくなるだけでなく、インスリンの過剰分泌により、脂肪が蓄積されてしまうのです。

今止めなければ一生止められないと肝に銘じて、今、その習慣を変えていただきたいのです。思い切って1ヵ月止めてみましょう。「あの苦しさは何だったんだろう?」と振り返ることができるようになれますよ。

甘いものには中毒性があるのです

「飲み物」で減らす場合

口に入れるあらゆる飲み物を、水やお茶に変えます。コーヒー、紅茶も砂糖やミルクを入れないストレートであれば問題ありません。清涼飲料水のみならず、飲むヨーグルトや野菜ジュースにも注意が必要です。コップ1杯のフルーツジュースや甘味料入りの缶コーヒーは、およそ70〜80kcalです。3回摂取すると200kcal以上になるのです。

飲み物を、水やお茶に変えます

目標体重をあきらめない

肥満症の患者さんにとって、これまで長く続けてきた食習慣を変えることは本当に大変なことです。私たちはそれをよく分かっています。

次にお会いした時に患者さんの体重が増えてしまっているということも少なくありません。「先生との約束を破ってしまったので来てよいものか迷った」という方もいらっしゃいます。それでも私は来てくださったことに大きな意味があると思っています。来ていただかなければ私たちにはどうすることもできません。

食事療法は長い付き合いになると覚悟してください。状態がよくなったり、悪くなったりを経験しながら、最後には絶対に目標とする体重に到達していただき、私も一緒に喜びたいと思っています。