肥満症の改善を目指して

先生方からの応援メッセージ

肥満症専門医、そして肥満症に関連する23学会の医師が協力しながら肥満症の撲滅を目指して診療に当たります。

門脇 孝 先生

日本肥満学会 理事長
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 院長

日本肥満学会の理事長を務められる門脇先生は、ご専門の糖尿病を診療される中で肥満症の対策が必要と感じるようになったとおっしゃいます。
肥満症の専門外来で、診療に当たってこられた門脇先生に、肥満症、さらには医学会での取り組みについて伺いました。

日本における肥満

男性の肥満者(BMI≧25)の割合は、1980年代から年々増加し、現在では30%前後となっています。内臓脂肪の蓄積の指標となるウエスト周囲長が、男性で85cm以上、女性で90cm以上の人の割合は、男性および女性のどちらにおいても年齢と共に増加しています。

日本人成人の年齢階級別にみた肥満者(BMI≧25)の割合の年次推移

日本人成人男性の年齢階級別にみた肥満者(BMI≧25)の割合の年次推移

ウエスト周囲長(男性85cm以上、女性90cm以上)の割合

ウエスト周囲長(男性85cm以上、女性90cm以上)の割合

このような肥満者の増加の背景には、戦後、私たちを取り巻く環境が大きく変化し、生活習慣が変わってきたことがあると思われます。具体的には、脂肪の摂取量が増え、特に動物性脂肪の割合が上昇していること、そして便利な生活の中で運動をする機会が減っていることなどが考えられます。

皮下脂肪と内臓脂肪

体脂肪には、皮下脂肪と内臓脂肪があります。このうち内臓脂肪は健康障害と強く関係しており、とくに注意が必要です。

皮下脂肪は女性ホルモン(エストロゲン)によって蓄えられることが知られています。すなわち、女性ホルモンが多い閉経前の女性では、余剰なエネルギーは主に皮下脂肪として蓄えられるのです。ここで蓄えられた皮下脂肪は妊娠・出産・授乳の際にエネルギーとして使われます。一方で、女性ホルモンの少ない男性や閉経後の女性については、余ったエネルギーは主に内臓脂肪として蓄えられます。

内臓脂肪がたまると、そこに収容しきれないエネルギーが本来は脂肪をためる役割を持たない筋肉や肝臓にまでたまり始め(異所性脂肪)、それが糖尿病や脂質異常症、高血圧などのいわゆる生活習慣病につながっていくのです。

この内臓脂肪に対して、食事療法は新たに付くことを防ぎ、運動療法は燃やすことに働きます。「皮下脂肪は付きにくく燃えにくい」、「内臓脂肪は付きやすく燃えやすい」と覚えておいてください。私たちは皮下脂肪を出し入れが少ない定期預金、内臓脂肪を出し入れの多い普通預金に例えています。

23の学会が肥満症の撲滅のために連携

2018年10月、日本肥満学会は、「神戸宣言2018」として肥満症と関連する23の学会と協力しながら肥満症の撲滅を目指していくことを宣言しました。肥満症は、糖尿病や脂質異常症、高血圧など全身のさまざまな健康障害と関係するため、それぞれの健康障害に詳しい医師が協力して診ていこうというものです。

「神戸宣言2018」には、糖尿病や脂質異常症、高血圧にかかわる学会だけでなく、日本呼吸器学会、日本肝臓学会、日本腎臓学会、日本整形外科学会、高度肥満症の方を対象とした肥満症手術のための日本外科学会、日本小児科学会、日本産科婦人科学会、日本老年医学会などが参加しています。

第39回日本肥満学会
日本医学会連合「領域横断的肥満症ワーキンググループ」23学会

肥満症にみられる健康障害

肥満症患者さんの主治医としての肥満症専門医

日本肥満学会では、肥満症専門医や認定肥満症専門病院を設置し、肥満症の患者さんが安心して診療を受けていただけるような環境作りを進めています。

肥満症専門医は、肥満症患者さんの主治医となり、他の医師と協力しながら診療します。
また、肥満症の予防や肥満者の減量のサポートにも力を入れています。

医師と共にあせらずに着実に減量

内臓脂肪は皮下脂肪に比べて付きやすく燃えやすいというお話をしました。食事療法や運動療法で最初に減る体重の多くが、内臓脂肪ということです。
例えば80kgの人に10kgの内臓脂肪が付いていたとすると、80kgの3%程度(2.4kg)の減量により、内臓脂肪が20%以上も減ったという計算になるのです。

内臓脂肪1kgはおおよそウエスト周囲長1cmに相当します。日本肥満学会は、食生活の改善と運動の増加によってまずは3kgの減量と3cmのウエスト周囲長の短縮を実現するサンサン運動を提案しています。
肥満症の方は、ぜひ適切に医師の診療を受けながら、あせらずに着実に減量していっていただきたいと思います。