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開発の経緯(オゼックス細粒小児用)

オゼックス細粒小児用15%(一般名:トスフロキサシントシル酸塩水和物細粒、略号:TFLX)は富山化学工業株式会社(現 富士フイルム富山化学株式会社)綜合研究所において小児用として開発されたニューキノロン系経口抗菌製剤です。

小児呼吸器・耳鼻科感染症においては、肺炎および中耳炎の主な原因菌として肺炎球菌、インフルエンザ菌が知られていますa,b)。特に近年ペニシリン中等度耐性肺炎球菌(PISP)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、ならびにβ-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)などの耐性菌の分離頻度が高くなっており、医療現場および関連学会から上記感染症の原因菌に抗菌スペクトルを有し、かつ耐性菌に効果が期待できる経口薬が望まれるc)なかで、ニューキノロン系小児用細粒剤としてオゼックス細粒小児用15%が開発されました。

トスフロキサシントシル酸塩水和物は1990年に「オゼックス錠75・150」として承認・販売されて以来、現在まで成人の感染症に使用されてきています。

オゼックス細粒小児用15%は、肺炎、中耳炎を対象とした臨床試験において優れた有用性が認められ、またオゼックス錠75・150がバイオテロ対策に伴い適応症として取得した炭疽、コレラについても有用性が期待できることから、2009年10月に製造販売承認を取得しました。

また、近年、肺炎マイコプラズマのマクロライド系抗菌薬への耐性菌が増加し、関連学会d)より厚生労働大臣等に対して、「小児の肺炎マイコプラズマ感染症におけるキノロン系抗菌薬の適応拡大に関する要望書」が提出されました。オゼックス細粒小児用15%は、「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017」a)において、マクロライド耐性肺炎マイコプラズマが強く疑われる場合の治療の選択肢の一つとして推奨されています。これらの状況を受けて、2017年3月にオゼックス細粒小児用15%は肺炎マイコプラズマに対する適応追加の一部変更承認を取得しました。

さらに、医療現場および関連学会から、小児へのキノロン系抗菌薬の処方において、 細粒よりも錠剤を希望する小児患者に適切な用法・用量で服用できる錠剤の開発が要望e)されたことを受け、 オゼックス錠小児用60mgが開発され、2018年2月に製造販売承認を取得しました。

a) 小児呼吸器感染症診療ガイドライン作成委員会 作成:小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2017
b) 藤澤利行,鈴木賢二ほか:日本耳鼻咽喉科感染症研究会会誌 27(1):63,2009
c) 第1回小児薬物療法検討会議 資料7.厚生労働省 平成18年3月30日
d) 日本小児感染症学会
e) 日本小児感染症学会:小児用キノロン系抗菌薬の適正使用に関するご協力のお願い(平成29年10月19日)、2017

オゼックス錠(トスフロキサシントシル酸塩水和物、略号:TFLX)は富山化学工業株式会社(現 富士フイルム富山化学株式会社)綜合研究所において開発されたニューキノロン系の経口抗菌製剤です。
本剤の活性本体であるトスフロキサシンは、ナフチリジン環の1位にジフルオロフェニル基、7位にアミノピロリジニル基を有し、これによりグラム陽性菌およびグラム陰性菌への抗菌力増強と、嫌気性菌に対する抗菌スペクトル拡大、中枢性の副作用軽減f)が可能となりました。本剤はさらに製剤的な安定性や溶解性を高めるためにトスフロキサシンをトシル酸塩とした薬剤です。

f) 古坊真一ほか:日本化学療法学会雑誌 58(S-2):12-23,2010